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黄昏色の欧州

 自分でも信じられない「還暦」を迎えてからの初めての書き込みだ。最近、長く生きてくるとおもしろいことがあるものだ、と思うことがある。

 わたしたちはある程度まで欧州文化のなかで生きてきた。中学校や高校で世界史を教えられて、その文化が世界にひろがってきたプロセスは念頭に入っている。でも、無意識のうちに、その歴史の流れはこれからもこれまでの延長線上で続いていくのだろうと思っていた。それが、いや、違う、やはりこの世には作用反作用の法則がはたらいているんだ、因果応報というのはあるんだ、わたしたちは一時的に地面から飛び上がることができても、やはり最終的には重力がはたらいて差し引きゼロになるような原理がはたらいているんだ、と思えるような現象が起きている。

 先日、国連UNHCR協会から電話がかかってきた。わたしのように貧乏で新幹線自殺が他人事とは思えない者にも、わざわざ貴重な時間をさいて寄付依頼の電話をかけてくるのだから、欧州へのアフリカや中東からの難民流入はそうとう深刻な事態にいたっているのだろう。それなら、貧乏かどうかにかかわらず、同じ時空に肉体と心を授かった仲間として、互いに助け合うことに異存はない。でも、引っかかったから、電話をかけてきた若者に対して、ついこんなことを言ってしまった。

「でも、考えてみな。欧州は大変だ、ドイツはやさしいから難民を受け入れているなんて、欧州は人道的な意識から難民を受け入れているように言っているけど、そもそも、いまから500年か600年前、欧州の大航海時代のアフリカの人たちはどういう思いをした? いきなり白い人間が鉄砲やなにかを持って現れて、受け入れるとか、受け入れないとか言えたかい? そりゃあ、アフリカでも部族同士の争いみたいなものはあっただろうけど、いきなり自由を奪われて、奴隷にまでされたんだよ。そのときと逆の人の流れが、いま起きているんだ。しかも、アフリカや中東の人は欧州の人を奴隷にするぞなどとはひとことも言っていないだろう。アフリカや中東の人たちがふるさとで暮らせなくなった理由だって、すべて欧州や米国の人がつくったことだよ。それなのに、やさしいから受け入れる、人道的だから受け入れるなんて、そんなエシックスロンダリング(倫理洗浄)の極みのようなことを言っている。助け合うのはいいけど、そこのところはちゃんと押さえておいてくれないと困るよ」

 おそらく「人助けがしたい」とかなんとか思ってがんばって働いている若者なのだろう。ふとそう思ったから、ついでに「人助けの仕事だって、底辺で納税や寄付をする人たちがいるからできることなんだよ」ということも、ひとくさりやりそうになったが、そこまでやるのはかわいそうかと思い、思いとどまった。

 でも、欧州の人たちが大航海時代以来、世界にひろめてきた「暴力的侵略」→「支配」→「法や規制による縛り」という、貧困な欧州の生活環境をカバーするためのビジネスモデルは、武器やなにかをつくり、人の命を金に置き換えることをいとわない人間社会の悪のコンポーネントの存在のために明らかに破綻しつつある。いまの欧州への難民流入はこれまでの欧州・米国主導のビジネスモデルが持続不可能なものであることを証明しているような現象であり、わたしたちがより長く人類の生存を確保していこうと思えば、新しいビジネスモデルを考え出さなければならないときが来ているのだと思う。世界史の年表に新たな転換点が訪れるときまで生きてこられたことを感慨深く思う。

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by pivot_weston | 2015-11-10 09:46 | ブログ