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2013年 01月 11日 ( 1 )


四国の核対決

 作家の大江健三郎さんがあらためて「脱原発」の声をあげた。このところ、世間に吹いてきた風のなかで、あら、「脱原発」の声がまったく聞こえなくなったな、と思っていたので、運動をしている人たちも危機感をおぼえ、「顔」を前面に押し立てる必要性を感じたのだろう。

「風」というのはなにも、一説には東電と関係のある「M」という集計ソフトの会社が投票結果を操作したと言われている選挙のことばかりではない。ひところは、あれだけ連日「反原発」「脱原発」と言っていたメディアもおおむね静まり返っているみたいだ(それどころか、前にも書いたように、読売系の日本テレビにいたっては、「箱根」が終わって視聴率が上がったところで、元祖原発推進者の中曽根さんを引っ張り出してきて特番を組むのだから、いやいや、恐れ入る、たいへんな放送局だと思わされたが)。

 旧政権打倒のためなら、いったんは自民党政治を支える利権構造の核のひとつである原発を批判することもいとわないほど自民党との結びつきが強いからなのか、それとも、首相官邸の真ん前の記者クラブを通して政府発表の情報をすべて手に入れられる立場にあり、原発の防災体制に問題があればそれを指摘する役割があったのに、それをしてこなかった過去をごまかそうとしたかったのか、そんな意図はよくわからないが、ともあれ、テレビでちらりと大江さんの記者会見の断片を見たとき、つい、あゝ、四国やなあ、と思ってしまった。

「脱原発」の大江さんだけではない。「原発推進」というより「核推進」と言ったほうがいいかもしれない石原慎太郎さんも四国の人だ。総理になった安倍晋三さんは自身と直接的なつながりの薄れた山口をいまでも自分のホームグラウンドと位置づけ、鳥取の石破茂さんと山陰政権を形成し、もともと鳥取をルーツとする民主党の前原誠司さんとも交流を続けているみたいだが、この原発をはさんで対峙するふたりの四国人は、同業者なのにつながりをもっているようには見えない。

 愛媛県の県都・松山から少し南へ下ったところに「伊予の小京都」と呼ばれる「大洲」という町がある。わたしは近くを通過したことがあるだけで、寄ったことはないが、高校時代のマドンナ先生がここのご出身だったので、それとなく話を聞かせていただいて、独特な町だと聞いている。先に亡くなった森光子さんなども、連続ドラマで有名になった樫山文枝さんの前に単発ドラマで演じた「おはなはん」の町だ。

 大江さんは、肱川という川の中流に開けたこの盆地の町・大洲から北へ山を越えた内子の人。石原さんは、お父さんがその肱川が瀬戸内海に流れ出す海辺の町・長浜の人(いまは長浜も大洲の一部になっているらしいが)。

 こういう歴史的、あるいは地理的つながりに、わたしはとても興味をひかれる。石原さんは、その子ども時代を知る人に話を聞くと、とても泣き虫で劣等感の強い人だったみたいだから、そのせいもあるのか、あまり四国とのつながりを強調していないみたいだが、ふたりの年の差は3歳。それなら、幼いころに内子の山から出てきた大江少年と都会から帰省した石原少年がお互いに親につれられ、大洲の町あたりですれ違ったこともあったのではないか、などと夢想する。

 そんなふたりが齢80を迎えて、「脱だ」「核だ」と日本中にとどろく声をあげ合っている。人間の織り成す風景はおもしろい。ただ、それにしても「核武装」はあまりにも荒唐無稽。いまは世界にNPTという枠組みがある。だから、イランも、北朝鮮も経済制裁の対象になっている。日本は、イランとも、北朝鮮ともよく似たところがある国だと思うが、だからといって、ああいうふうになりたいとは思わない。


by pivot_weston | 2013-01-11 15:35 | ブログ