チンさん、ありがとう

しばらく、チンさんのお店以外で食事をすることになった。

去年の8月のはじめに、初めてランチを食べに寄り、
9月に平日と土曜日の全食事をお願いするようになってから、
日曜日を除き、ほぼ毎日、チンさんの食事ばかりを食べてきた。

それでも、飽きない。

チンさんにも、飽きない。

いいやつだ。

なんでも知っているけど、なにもわからない人と、
なにも知らないけど、なんでもわかる人のどちらになりたいか
と聞かれれば、わたしは後者を選ぶ――
という吉行淳之介さんの言葉があるが、
チンさんはまさにその後者に属する人だと思う。

あ、いや、チンさんを知っている人は異論を唱えるだろう。
チンさんはなんでもよく知っている。
驚くほどの物知りだ。

でも、わたしは逆だと思っている。
物知りなのは、なんでもわかった結果であって、
そもそも、知識というものにはそれほど興味がないのではないかと思う。

濃やかなのだ。

人懐こくて、甘えん坊の側面もあるチンさんは、
店に来た人と、誰とでもよくおしゃべりをする。

はたから見ていて、哀しいほどに
お客さんとの接点に気を配っていることもある。

ただひとつのことに集中しているから、
常連のわたしの声などは、耳に入らないこともある。

チンさんのこれまでの人生のことは、よく知らない。
でも、ずっとそうして生きてきたのだろうということは
なんとなくわかる。

17歳で日本へ来て、ざっと20年ほどの間に
高層ビルの林立する西新宿に持ち家をかまえるまでには、
いろいろなことがあったのだろう。

でも、その間、この人は一度も生き方を変えてはいないだろう。
いつも、目の前にいる人との接点を大切にし、
ひたすらそこに集中し、
その結果として、右往左往しながらも、
大人になったら、独立し、家をかまえ、親孝行もするという
多くの人たちの頭の根底にある人生のパターンもクリアしてきた。

すごいやつ、えらいやつ、でもある。

大人になったら、親に反抗し、世間に反抗し、なんでもかんでも
既成の観念をぶっ壊すという
対照的な人生のパターンを歩んできたわたしにとっては、
若いのに尊敬できるやつでもある。

ときにはそんな、すごい人生を、
実はごくごくふつうの女の人なのに、
がんばって、自分の信じることを崩さずに生きてきたチンさんの姿を想像することもある。

筋を通す。

チンさんはよくその言葉を口にする。
人との接点を大切にして筋を通そうとする。
結果的には通らないこともあるが、それでも通そうとする。

そういう生き方には、わたしもI agree with you.だ。

この1年あまりの間に、わたしはまったく背景の異なるチンさんから
多くのことを教わってきた。
頑迷な考え方の持ち主なので、いっぱい迷惑や苦労をかけてきたが、
おかげでわたしの人生は自分が心の底で望んでいる方向へ進んでいると思う。

これだけお世話になったのだから、
チンさんにもその甲斐を味わってもらわなければならない。
恩返しをしなければならないという義理が、わたしにはある。
これからの人生を応援したいという思いも、わたしにはある。

言葉でお礼を言っても、恩返しにはならない。
でも、ともかく、ひとまずはここでお礼を言っておこう。

チンさん、これまで1年あまり、ありがとう。
さあ、これからもがんばっていこう!

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by pivot_weston | 2008-12-13 11:27 | ブログ