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幸福なまどろみ

昨日、まどろむ人を見た。
まわりの人が食事をしたり、
話をしたりしているときだ。

最初は話の輪に参加していたのに、
少しお酒を飲んだところで、
気がつくと、
テーブルに両肘をつき、
上体を起こしたまま、
うつむいて、こくりこくりしていた。

疲れていたのだろうか。

そうかもしれない。
でも、わたしはそこに幸福の気配も感じた。

にぎやかな話の輪だ。
その人はいつものように、
チクチクとからかわれていた。

その状態が
よかったのだろう。

会社では、そろそろ定年を迎える。
家庭では、
去年まで寝たきりのおかあさんの看病をしていた
妹さんがひとり待っている。

会話は、おそらくないのだろう。

からかわれようと、
けなされようと、
おそらく、そうしてわいわいがやがやのなかにいること、
それが幸福の気分を誘い、眠気を引き出したのだろう。

うつむいた顔には、
そんな内面が浮かび出ているように思えた。

考えてみれば、なんのことはない、
わたしも同じだ。

いや、その場にいた誰もが
人との接点を求めてやってきているようにも思える。

そういう意味では、その人は、
わたしたちのなかで
ほかの誰よりも孤独のトラックを長く走ってきた
トップランナーだ。

そういう人が
疲れた夜に、人と接してふと
胸にほんわかしたものをおぼえ、
まどろみのなかにいる。

そう思うと、
どこかこちらまで
悪くない気分に引き寄せられる光景だった。


by pivot_weston | 2009-10-01 12:37 | ブログ