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今日の日経から

1面の「イラン大型油田 中国、権益70%取得へ 日本10%保有」。

核開発がらみで欧米諸国と対立しているイランが
その対立のために日本の権益を75%から10%に引き下げた大型油田の権益の70%を
中国に与える方向に動いているという。

石油を中国にとられるという表面的な問題もたいへんなことだろうが、
中国がとりに行き、それによって、イランが核開発の方向性を曲げずにすむ
環境を残しておいたほうがもっと大きな問題のように思える。

原子力発電はともかく、
核兵器が一部の治世者を除く世界中の一般庶民にとって
「共通の敵」であるのは明らかなこと。

日本はことあるごとに「唯一の被爆国」をアピールしている。

でも、それができることのすべてだろうか。

日本にも、政治家はともかく、ほかの多くの人たちの心を動かすことができる
優秀な表現者がいる。
映画界にも、文筆界にも、電通にも、博報堂にも、大勢いる。

こうしたことがあるたびに、
どうして日本政府は日ごろからそういう表現者たちを動員して、
世界中の人たちの胸に核兵器の無用さや罪深さを浸透させる努力をしないのか
と不思議に思う。

世界中の人たちの脳裏に「核兵器はいかん」という意識が浸透していれば、
中国政府だって、いくら目の前においしそうなごちそうをぶら下げられても
そう簡単には動けなかっただろうし、
そもそも、イラン国内でも、他人に死の脅威を与えることで自立を手に入れようとするような、
そんな、暴力団のような発想は湧いてこなかっただろう。

もしかすると、日本政府は口で言っていることとは裏腹に、
核兵器の存在をよしとしているのか、
人と人とが殺し合いをする世のなかが続くことを望んでいるのか、
とも疑いたくなる。

毎年、8月6日が近づくたびに、
人生の残り時間の少なくなった体験者の語り部たちにスポットが当たる。

でも、実直に事実を語り伝えるあのかたがたの言葉に、
この平和な世のなかで生まれ、育った若い人たちにアピールするものがあるだろうか。

若い世代がそっぽを向いて戦争ゲームに興じるのも、
ある意味では、しかたがないようにも思える。

人の心になにかを伝えようとすれば、
ただ事実を語り伝えるだけでなく、いろんな方法が考えられる。

「核兵器はむごい」という体験国の意識を世界中に浸透させるという戦略のもとに、
なにか独創的な、そういう方法を考え出すだけの力は、
この国の表現者にもある。

語り部にばかりアピールする責任を押しつけているから、
結果的に、石油を逃すという事態も招いたのではあるまいか。

不可能とも思えるプロジェクトを、いちばん図体のでかい国家という組織が
はなからあきらめていたら、いったい誰が取り組めるというのか。

目的が達成できず、むだに終わる出費だって、
当然、政府の予算のなかにはあっていいと思う。

13面の「伊藤忠、豪で水資源事業」。

伊藤忠が世界の水道運営最大手のフランスのスエズ社と組んで
オーストラリアのメルボルンの近くに大規模な海水淡水化プラントを建設することになったという。

ほかの商社も中東や南米で海水淡水化プラントなどの水資源事業に取り組んでいるという。

あらあら、われらが四国の香川県は、
毎年のように干上がった水源のダム湖を世間にさらし、
「わたし、自宅は香川県に……」と言うと、「はは、あそこ、毎年ね」と
首都圏では笑いものになっているというのに……。

21面の「大機小機 格差再考」。

むむ、こりゃ、ほんとうか。
目安にする指標にもよるだろうが、
格差が縮まっているという調査データが出ているのに、
マスコミがそれを広がっているかのように喧伝しているとは。

数行で内容を伝えるのは難しい。
それほど長くない記事なので、みなさまもご一読あれ。

40面の「文化 「闘う映画人」大島渚 再考」。

うわ、おもしろい人は、紹介記事までおもしろい。

ほらほら、日本政府さん、
日本にはこんなに表現意欲や独創性にあふれた表現者がいるんだよ。

こういう人は、官製メッセージを発信するのをいやがるかもしれないけど、
そういう気持ちはアプローチする側の熱意や本気度でひるがえることもある。
お役人さんにも、この記事を読んで「表現の力」というものを感じてほしいと思う。


by pivot_weston | 2009-08-01 13:36 | 日経新聞