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真夏の宵を愉しむワイン会

ホテル西洋銀座3階のサロン・ラ・ロンドで
ルミエールの「真夏の宵を愉しむワイン会」があった。

6時半開場、7時開会に合わせて
三々五々、フランスの邸宅のサロン風に飾りつけられた「ラ・ロンド」に到着した参加者のみなさんが
フリュートグラスにつがれたウェルカム・ドリンクのルミエール・ペティヤンを手にして、
ホワイエにゆったりと配置された布張りの椅子に腰をおろし、
あいさつやらなにやらを始めていく。

おゝ、木田社長、お久しぶり!
工業デザインの分野からワインの世界に転身して一から醸造技術を学び、
カリスマ塚本俊彦会長のあとをついで、
新しい時代に即した独自のカラーを打ち出そうとしてがんばっている。

大好評の甲州スパークリング、ぺティアンを考案したのも彼だ。

ハーイ! ドレスアップしたジェニファーさんも手をふっている。
朝倉書店の星さんも。

当夜のワインで愉しむ宵は、
ガラス工芸家、由水常雄さんの作品と造詣を愉しむ宵でもある。

サロンの中央には、
由水さんが正倉院の宝物を模して造られたガラス器が展示されており、
由水さんご自身も、
その場で参加者のみなさんと話をしながら著書にサインをしておられる。

7時を過ぎると、
木田社長や、西村信子ソムリエールや、ホテル西洋のみなさんに案内していただき、
40名ほどの参加者たちが、ひとり、またひとりと、
長いひとつのテーブルの、名札が置かれた席にそれぞれ着座していく。

まずはドメーヌ・ド・シュヴァリエの白、レスプリ・ド・シュヴァリエ2000年がそそがれ、
当夜のシェフ、山口拓哉さんが料理の説明をしてくださる。

最初に出てきたのは、
「特選山梨白桃とクレソン、ルーコラをバニラと黒コショウの香る
ルミエールフレーヴァードヴィネガーと共に」。

わたしのこれまでの人生でもっともおいしかったもののひとつが、
いつだったか、塚本俊彦さんがお中元にくださった山梨・一宮の桃。
ひと口かじったとたんに、衝撃を受けるほどのおいしさだった。

そのころ、塚本さんは、それでも、
「まだまだ桃をつくる技術は岡山のほうがはるかに上ですね」
とおっしゃっていた。
でも、この日、となりに座られた奥さま、塚本レイ子さんは、
「もう山梨のほうが抜きましたね」
とおっしゃった。

なるほど。
バニラの香りが白桃の先に搭載された弾頭のように口のなかではじけ、広がる。

シュヴァリエの白にも、上級シャトーらしい貫禄のあるまるみが感じられる。

次は「赤座海老とアンディヴのポワレ、オレンヂバターソース」。

おゝ、芳ばしい。
オレンヂの風味というのは、こうも芳ばしさを引き立ててくれるものなのだ、
と感心する。

次の「鴨砂ギモのコンフィとセップ茸のソーテー
プティシェフヴィネガーで仕上げた軽い赤ワインソースとフォワグラのパルフェ」は、
そこまでの味の流れを煮詰め、ひとつの極点に集束させるものか。

次に出てきた「鯒のムニエル 万願寺唐辛子とセルバティコ、トマト、ケイパー、
オリーヴのラタトゥイユ仕立て ボンシェフヴィネガー風味」で
舌の前に広がる味の景観は一変する。

鯒の肉肌が、歯ごたえもよく、素朴で、おいしい。
いい「焼き」だ。

そして、リフレッシュされた舌に飛び込んできたのが、
「牛肩ロース肉備長炭焼き “シャトールミエール”バター添え」。

シャトー・ルミエールを煮詰めてつくったといったか、
このバターとソースの濃厚な甘みが巧みな案内役となり、
かみしめる肉のおいしさを包み込んでくれる。

ああ、おいしい。
そう思ったところで出てきた、最後の舌の整え役が
「沖縄県産ピーチパインのロースト パッションフルーツソースとココナッツシャーベット」。

コーヒーのややきつめの苦味が流れをきれいに締めてくれた。

この間、次から次へとグラスにつがれていったのは、
シャトー・ディスティーユ2000年、
シャトー・シャス・スプリーン2000年、
シャトー・ボーセジュール・ベコ2000年
の3本の赤。

でも、そのあとにトリがひかえていた。
「牛肩ロース肉備長炭焼き……」が出てきたあたりで、
大好評につき売り切れ、もう塚本ご夫妻のセラーにしかないという、
1990年のシャトー・ルミエール、一升瓶入りが出てきた。

そう、おいしいワインはできるだけ大きい容器に入れておいたほうが、
容積のわりに酸化反応を起こす空間が限られ、
長い時間をかけてじっくりと、さらにみごとなワインに熟成するのだという。

なるほど、なるほど、まるで違う。
瓶熟の前にあのシャトー・マルゴーの樽で熟成させたワイン。
複雑な香りや風味が一気に広がり、
それ全体を、あのボルドーのいいワインにつきものの、
「黄金色」という言葉を想起させる味わいの世界が包んでいる。

いや、いいワイン会。

途中で正倉院の宝物の説明に立たれた由水さんが手にもったガラス器が
サロンの照明のもとできらきらと、無数の光を放っていた光景も印象的。

初めて参加され、
わたしのとなりに座っておられた石井さん、
話べたで、いい宴の友が務まらずにごめんなさい。

木田社長も、塚本レイ子さんも、西村ソムリエールも、
山口シェフを始めとするホテル西洋銀座のみなさんも、
どうもお世話さま、お疲れさまでした。

あゝ、いいなあ、わたしも――
と思われるかたは、どうぞルミエールまで。
いつか、どこかのワイン会でお会いしましょう。

(なお、わたしは、せっかくの料理のテーブルでカメラをかまえるのが好きではないので、
ほかのいわゆる「グルメブログ」のように写真で紹介することはいたしません。
悪しからず。)


by pivot_weston | 2009-07-25 09:07 | ワイン