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カフェ・オ・レ

人工呼吸器につながった「父親」が
カフェ・オ・レを飲みたがった。

ははは――
見舞いに訪れてまわりを囲んでいた家族から
笑いが起こった。
そんなに好きなのか――と。

だから、
じゃあ、よくなったら、そこの川をカフェ・オ・レで満たしてやるよ――
と軽口で受けた。

その望みを、「父親」は昨日も口にした。

でも、昨日はもう軽口では受けなかった。

気管切開が迫っている。
飲み物を喉から流し込むことは、もうできないかもしれない。

「ごくごくと飲みたい。(入院する前の夜に)
ごくごくと飲んでおけばよかった」と言う。

彼の希望、訴えの正体が明確になった。

その瞬間、家族は自分の内面を見る。

なんとか飲ませてやりたいと思えば、
もう川を満たそうなどとは思えない。

昨夜も容態が悪化し、ふたたび人工呼吸器を挿管されたという。
ミオパチーという土壌の緩みの実態がつかめない。