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GM崩壊

明日はアメリカの歴史の大きな転換点になるのだろうか。

変化は新しいものをもたらすと同時に、
古いもののどこかを消していく。

新しく現れたオバマ大統領が懸命に残存策を講じようとしているが、
古いGMは、ひとまずこれまでの歴史に幕を閉じようとしている。

アメリカにとって、GMの消滅は大ごとだ。
日本にとってのトヨタの消滅どころではない。

多くのアメリカ人の暮らしばかりか、
誇りや自意識までもが
GMを始めとするデトロイトのビッグスリーに支えられていた。

わたしが訳してきたデトロイトの探偵ベン・パーキンズも、
フォードの71年型マスタング・コンパーティブルに乗っているが、
GMが破綻したら、とんでもないショックを受けることは間違いない。

支えていたものをなくしたときの世界はどうなるのだろう?
フジテレビで深夜に放映が始まった『マッドメン』は、
1960年代のマディスン・アヴェニューを舞台にしている。

崩れかけている自尊心の拠りどころに、
いまなおアメリカ人は回帰しようとしている。

もうほんとうにアメリカはone of them国家になっていくのだろうか。
次に覇権を握るのは、中国か? インドか?――などと
まわりをきょろきょろしている場合ではない。

覇権国家アメリカに腰巾着のようにつき従って
その繁栄のおこぼれに預かってきた日本は、
次につき従う相手をさがすより、
まず自分たちが独立した国にならなければならない。

アメリカ凋落後の世界で
求められるものはいっぱいもっている。

近所の危険な国、北朝鮮についても、
70年前の自国の歴史を振り返れば、
いまどういう段階にあるかが推察でき、
どういう手が有効かを判断できる立場にある。

70年前の日本を暴発に導いたのは「封鎖」というアメリカの戦略だった。

ともあれ、GMという巨大な繁栄世界を崩壊へと導いたのは、
その繁栄と現実との乖離だった。
いったん繁栄を手に入れた者が
現実を顧みる視点を忘れ、
自分たちだけで繁栄した世界を築き、それを未来永劫にわたって回転させていこうとすると、
こうなる。

現実を無視し、票と仕事や金の物々交換をぐるぐると繰り返し、
雪だるまのように借金をふくらませてきた日本の自民党政治や官僚政治にとっても
人ごとではないのではあるまいか。

ことあるごとに「なにより重要」を繰り返してきた同盟の相手国
の自信が揺らぎかけている。

これは、わたしたちのマインドに「独立」を根づかせるチャンスになるかもしれない。