人気ブログランキング | 話題のタグを見る

人間の本能(3)

ニューヨークでは、土地の女性はあまり華美にならない服装をするという。
異性、男性のなかに眠る本能をあまり刺激しないようにするためらしい。

だが、タイムズ・スクエアの広告は、
かなり過激に両性の本能を刺激している。

刺激は、いい。
わたしたちが生きている目的は、たぶん、
わたしたちが生きつづけること以外にないだろう。
刺激はその目的を果たすのに役立つ。

では、ニューヨークの女性たちの気遣いはなんなのだろう。
彼女たちはわたしたちの種としての目的に否定的なのだろうか。

いや、いくらなんでも、そんなことはないだろう。
みんな、個の世界では、刺激したいし、刺激されたがっている。

問題は、そういう個の世界の事情をリサーチし、
そこに訴えたがっている広告主が使用する手段が
ひとりひとりの世界に個別に訴えかけるものではなく、
人間を十把ひとからげにして訴えかけるマスメディアになっていることにあるのだろう。

近ごろ、日本のマスメディアでよく耳にする言葉に「きれい」がある。
「きれいになる」ことは、マスメディアから流される情報の受け手であるわたしたち
個々の世界では、否定のしようがない究極の言葉のひとつのように思える。

でも、十把ひとからげにして流されると、
「きれい」とはなんなのだろう、と思う。

心をひきつけるものとは、わたしたちを究極の目的の達成に向かわせるものだと思う。
異性をさておいての「きれい」はありえないと思う。

でも、ほんとうにみんな、誰彼となく、相手かまわず
「きれい」でありたいと願っているのだろうか。

街には、マスメディアから流される情報そのままに
「きれい」になりたい気持ちや「きれい」でいたい気持ちがあふれている。

個の世界と世のなか全体、つまり外の世界の混同や交錯――
街を走っていると、そんなものをつい感じてしまう。


by pivot_weston | 2009-04-02 08:37 | ブログ